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薬屋のひとりごと名シーンランキング|何度でも見返したい珠玉の場面を厳選

後宮を背景に薬草を手にする猫猫と月明かりの中で彼女を見守る壬氏 薬屋のひとりごと

第1位は第24話、最も有名な神回候補は第19話です。第1期全24話から名場面TOP10を選びました。

『薬屋のひとりごと』の名シーンは、謎が解ける爽快感だけでなく、猫猫や壬氏たちの語られない感情まで映像で伝えてくれるのが魅力です。

※この記事には、アニメ『薬屋のひとりごと』第1期最終話までの重要なネタバレが含まれます。

薬屋のひとりごと名シーンランキング一覧

結論から一覧にすると、第1位は第24話の羅漢と鳳仙の再会、第2位は第19話の祭事場での救出、第3位は第12話の身請けです。

順位話数・サブタイトル名シーン主な評価理由
1位第24話「壬氏と猫猫」羅漢と鳳仙の再会、猫猫の舞親子、恋、失われた時間が一つにつながる
2位第19話「偶然か必然か」猫猫が祭事場で壬氏を救う複数話の伏線回収と映像演出が圧巻
3位第12話「宦官と妓女」壬氏が猫猫を身請けする二人のすれ違いと関係の転換点
4位第3話「幽霊騒動」芙蓉妃が自ら未来をつかむ後宮の女性の知恵と主体性を描く
5位第5話「暗躍」猫猫のそばかすが化粧だと判明素顔以上に生存戦略が印象を変える
6位第11話「二つを一つに」阿多妃との別れと壬氏の抱擁言葉にされない喪失感が伝わる
7位第17話「街歩き」変装した壬氏と猫猫の外出身分を離れた二人の自然な距離感
8位第21話「身請け作戦」猫猫が李白の体格を観察する笑いと妓女の厳しい現実が同居
9位第18話「羅漢」薬棚の前で我を忘れる猫猫猫猫の探究心と翠苓との接点を描く
10位第6話「園遊会」毒入りの料理を見抜く猫猫毒を恐れず観察する主人公像が鮮明

このランキングは、筆者がアニメ第1期全24話を見直し、物語への影響、伏線回収、人物描写、映像・音響、見返したくなる力の5項目から選定したものです。

順位は筆者独自の評価であり、視聴者によって一番好きな場面は変わるでしょう。本記事では派手さだけでなく、後から見返したときに意味が変わる場面を高く評価しています。

アニメ公式サイトによると、第1期は2023年10月に放送を開始し、全24話で構成されました。最終話は2024年3月23日深夜に日本テレビ系で放送されています。

また、発行元のイマジカインフォスが2024年3月4日に発表した情報では、小説とコミカライズを含むシリーズ累計発行部数が3300万部を突破しました。アニメ放送開始前の2400万部から約6か月で900万部増えたことになり、第1期が作品の認知を大きく広げた時期だったと分かります。


薬屋のひとりごと名シーン10位〜6位は?

10位から6位には、猫猫の毒好きな本性、身を守るための知恵、壬氏の隠された寂しさが分かる場面を選びました。

第10位:毒入りの料理を見抜く猫猫|第6話「園遊会」

華やかな園遊会で、猫猫は玉葉妃の毒見役を務めます。そこで口にした料理に異常があると見抜き、周囲が緊張するなかで、本人だけが毒への好奇心を隠しきれない表情を浮かべました。

この場面の事実として重要なのは、猫猫が単に「毒に強い少女」なのではなく、味、症状、配膳の状況を冷静に観察していることです。さらに料理の取り違えから、里樹妃が特定の食材を避けなければならない事情にも近づきます。

映像では、妃たちの鮮やかな衣装や整然とした宴席と、猫猫の口へ運ばれる危険な料理が同じ画面に置かれます。明るく美しい色彩が、かえって後宮の不穏さを際立たせていました。

悠木碧さんの演技も印象的です。表向きには毒見役として抑制された話し方を保ちながら、毒を認識した瞬間だけ猫猫の内側の興奮が漏れます。

筆者には、この場面が「美しさと危険が同じ器に盛られた後宮」の象徴に見えました。普通なら恐怖を感じる状況で知的好奇心が勝つという価値観の逆転により、猫猫が代わりのいない主人公だと伝わります。

第9位:薬棚の前で我を忘れる猫猫|第18話「羅漢」

外廷の医局を訪れた猫猫は、棚に並ぶ薬と独特の香りに引き寄せられ、普段の警戒心を忘れるほど夢中になります。そこへ翠苓が現れたため、猫猫は奇妙な体勢のまま驚くことになりました。

大事件を解決する場面ではありません。しかし、薬や毒を前にした猫猫が、権力者と接するときには見せない無邪気な反応を見せる点が重要です。

この場面では、薬棚を見つめる猫猫の視線や身体の傾きが誇張され、短いコミカルな間が置かれます。その直後に翠苓との会話へ移るため、笑いのなかへ次の事件につながる人物を自然に登場させる構成になっています。

事実として言えるのは、ここで猫猫と翠苓が医薬の知識を接点として言葉を交わすことです。翠苓の後の行動まで知ってから見ると、気軽な会話の一つひとつに別の緊張が生まれます。

筆者は、猫猫の薬への情熱を単なる変わった趣味とは考えていません。この抑えきれない探究心こそが彼女の推理を前へ進める一方、危険へ近づけてしまう弱点にもなっています。

第8位:猫猫が李白の体格を観察する|第21話「身請け作戦」

猫猫は、緑青館の妓女・白鈴を身請けする相手として李白がふさわしいか確かめるため、その鍛えられた身体を細かく観察します。

猫猫に恋愛的な意図はありません。ところが、事情を知らない壬氏には、猫猫が李白の身体に強い関心を寄せているように見えます。

猫猫の無遠慮な視線、困惑する李白、不機嫌さを隠せない壬氏という三者の反応がテンポよく切り替わり、会話だけに頼らない喜劇になっていました。大塚剛央さんが演じる壬氏の声にも、表面上の余裕が少しずつ崩れていく変化があります。

ただし、この場面の背景は決して軽くありません。白鈴を身請けするには高額な費用が必要で、李白には好意だけでなく、彼女の生活を引き受ける覚悟も求められます。

筆者としては、笑える嫉妬の場面と、妓女が自由を得るために金銭が必要となる現実を一続きに描いた点を評価しました。視聴者を笑わせながら、花街の仕組みを忘れさせないのが本作らしいところです。

第7位:変装した壬氏と猫猫の街歩き|第17話「街歩き」

第17話では、壬氏が目立つ容姿を隠して市中へ出るため、猫猫が変装を手伝います。猫猫もそばかすを落とし、普段とは異なる装いで同行しました。

公式サイトの第17話あらすじでも、壬氏が猫猫に変装を頼み、二人で街へ出る展開が紹介されています。後宮や外廷とは異なり、周囲に二人の身分を知る者がいない空間が舞台です。

壬氏は猫猫から積極的に話しかけてもらえず、不満そうな様子を見せます。猫猫はその感情を完全には理解しないまま、串焼きを差し出し、屈託のない笑顔を見せました。

にぎやかな街の音、食べ物の湯気、柔らかな日差しが、後宮の張り詰めた空気とは異なる日常を作っています。大きな告白がなくても、二人が一時的に「仕事上の主従」から解放されたことが視覚的に伝わる場面です。

ここからは筆者の解釈ですが、壬氏は串焼きそのものより、猫猫が自分に向けた自然な表情に心を動かされたように見えます。

同時に、猫猫が安全な環境で育っていたなら、このような年相応の表情をもっと頻繁に見せていたのかもしれません。穏やかさの奥に、彼女が歩んだ人生への切なさがにじむ名シーンです。

第6位:阿多妃との別れと壬氏の涙|第11話「二つを一つに」

後宮を去ることになった阿多妃は、城壁の上で猫猫と酒を酌み交わします。猫猫は阿多妃にまつわる過去を推理しながら、彼女が抱えてきた喪失に触れました。

その後、壬氏に突然声をかけられた猫猫は足を滑らせます。壬氏は落ちてきた猫猫を受け止め、そのまま彼女を抱きしめました。

ここで確認できる事実は、壬氏が普段の整った笑顔を保てず、猫猫の前で弱さを見せることです。猫猫も最初は戸惑いますが、壬氏の様子に気づくと、すぐには振りほどきません。

夜の城壁という静かな空間、阿多妃との別れを受け止めきれない壬氏の表情、会話を抑えた長い間が感情を伝えています。説明台詞を増やさず、抱擁の重さで喪失を見せた演出です。

「もう少し温めてほしかったのではないか」という読み方は可能ですが、これは作中で明言された心情ではありません。筆者には、壬氏が猫猫を恋愛対象として求めただけでなく、孤独を預けられる相手として頼った瞬間に見えました。

※画像はAIによるイメージ

薬屋のひとりごと名シーン5位〜1位は?

5位から1位には、人物への認識が反転する場面と、複数話にまたがる伏線が大きな感情へ変わる場面を選びました。

第5位:そばかすが化粧だと分かる|第5話「暗躍」

第1話から猫猫の特徴として描かれていたそばかすは、生まれつきのものではありません。園遊会に向けて侍女たちが猫猫へ化粧を施す過程で、本人が毎日描いていたものだと判明します。

猫猫がそばかすを描く目的は、美しさを演出することではなく、容姿を目立たなくすることでした。花街周辺で男に狙われる危険を減らすため、自分の顔を意図的に変えていたのです。

そばかすを落とした猫猫を見て、壬氏が思わず見入る反応も印象に残ります。ただし、この場面の本質は「実は美少女だった」という驚きだけではありません。

猫猫が幼い頃から、自分を守るには周囲からどう見られるべきかを考えていた事実に重みがあります。彼女の冷静さは生まれつきの性格だけでなく、危険のある環境で身につけた技術でもあるのです。

アニメでは、化粧前後の顔を派手に変えすぎず、表情や髪形、色の整え方で印象を変えています。そのため「別人への変身」ではなく、これまで隠されていた一面が静かに現れたように感じられます。

筆者として最も面白いのは、視聴者まで猫猫の作った外見を「本来の顔」だと思い込んでいた点です。猫猫は作中人物だけでなく、画面の外にいる私たちの認識も操っていたことになります。

第4位:芙蓉妃の幽霊騒動、その真相|第3話「幽霊騒動」

夜ごと城壁の上で踊る女性が目撃され、後宮では幽霊ではないかという噂が広がります。その正体は、やがて武官へ下賜される予定の芙蓉妃でした。

周囲からは、芙蓉妃が心を病み、不可解な行動を取っているように見えます。しかし猫猫は、その振る舞いが偶然でも錯乱でもない可能性に気づきました。

芙蓉妃は、幼なじみの武官と結ばれるために、自分の評判や後宮の噂まで計算に入れて行動していたと猫猫は推理します。弱く救いを待つだけの女性に見えた人物が、実は自分で状況を動かしていたのです。

月光を受けて舞う姿は幻想的ですが、その裏側には極めて現実的な計画があります。美しい映像と猫猫の淡々とした推理が組み合わさり、恋愛とミステリーが同じ結末へ収束しました。

後宮の妃であっても、自分の将来を自由に決められるとは限りません。そのなかで芙蓉妃は、演技、噂、周囲の先入観という限られた手段を使い、望む未来へ近づきました。

筆者は、この回が『薬屋のひとりごと』における女性描写の方向性を早い段階で示したと考えます。知恵は事件を解くためだけでなく、自分の人生を守るためにも使えるという視点です。

第3位:解雇された猫猫を壬氏が身請けする|第12話「宦官と妓女」

阿多妃の後宮退出に伴う人員整理により、猫猫は後宮を解雇されます。壬氏は猫猫を残したいと考えていましたが、猫猫自身が残留を望んでいるのか判断できず、明確に引き留められませんでした。

猫猫は壬氏の本心に気づかず、決まったこととして解雇を受け入れます。相手を必要としているのに言葉が足りない壬氏と、他人の感情を推測しすぎない猫猫らしいすれ違いです。

アニメ公式サイトの制作インタビューでは、第12話の前半を壬氏視点、後半を猫猫視点としてカメラを置いたことが説明されています。この視点の違いが、同じ別れを二人が別々の意味で受け止めていることを伝えました。

後に緑青館を訪れた壬氏は、猫猫を身請けするための金を用意します。猫猫は壬氏のもとへ戻り、外廷で働く道を得ました。

金子を前に喜ぶやり手婆と、珍しい冬虫夏草に心を奪われる猫猫の反応が重なる演出も秀逸です。感傷的になりすぎる直前に笑いを差し込み、猫猫らしい再出発にしています。

ここからは筆者の評価ですが、壬氏の行動は恋愛的な独占欲だけでは説明できません。猫猫の知識を必要とし、その能力を発揮できる場所へ戻すために、自分が動いたことに意味があります。

もちろん「身請け」という仕組み自体には、現代の感覚から見て複雑な面があります。それでも物語上は、壬氏が曖昧な好意を初めて具体的な行動へ変えた転換点です。

第2位:伏線がつながり猫猫が壬氏を救う|第19話「偶然か必然か」

第19話は、第1期で最も「神回」と呼ばれやすいエピソードです。別々に見えた事件が一つの祭事へつながり、猫猫が身を挺して壬氏を救います。

ここでつながる主な情報は次のとおりです。

  • 第9話で、祭具管理に関わっていた高官・浩然が塩分の過剰摂取によって死亡したこと
  • 第14話で、軍部の食糧庫において粉じん爆発を伴う小火が起きたこと
  • 小火の混乱に乗じて、別の倉庫から祭具が盗まれていたこと
  • 倉庫番が官女から上等なキセルを受け取っていたこと
  • 後任の祭具管理者が、好物の海藻を食べて中毒症状を起こしたこと
  • 第16話で、彫金細工師が三人の息子へ不可解な遺言と品物を残したこと
  • 彫金細工師の技術から、熱に弱い金具が作れる可能性が示されていたこと

猫猫は、これらを「祭事に必要な人と物を少しずつ排除する準備だったのではないか」と結びつけます。そして、天井から大きな柱がつり下げられた祭事場・蒼穹壇が危険だと推測しました。

重要なのは、猫猫が黒幕や計画の全容を完全に把握してから動いたわけではないことです。証拠がすべてそろっていなくても、失敗した場合の被害が大きいと判断し、祭事場へ急ぎます。

入口では警備の武官に制止され、顔を殴られても退きません。羅漢の介入によって中へ入ると、熱で金具が壊れ、つり下げられていた柱が落下します。

その真下にいた祭事の執行者は壬氏でした。猫猫は迷わず飛び込み、壬氏を突き飛ばして自ら負傷します。

※画像はAIによるイメージ

この一連の映像では、猫猫の推理が過去の出来事の短いカットとして重なり、点だった情報が一本の線へ変わっていきます。移動の速度、息づかい、祭事場の静けさが交互に置かれ、危険が迫る感覚を強めました。

壬氏が負傷した猫猫を抱き上げて運ぶ場面には、挿入歌「蒼空の炎」が流れます。荘厳な祭事の空間と、血を流す猫猫、表情を失った壬氏が重なり、推理の成功だけでは終わらない余韻を生みました。

壬氏役の大塚剛央さんは、猫猫の負傷を目にした驚きと動揺を大声ではなく、呼吸や声の揺れで表現しています。猫猫役の悠木碧さんの弱々しい声との対比も、二人の置かれた状況を際立たせました。

なお、猫猫は祭事を行っている人物が壬氏だと知ったうえで救出へ向かったわけではありません。誰が標的か確定していなくても人命を守ろうとした点に、彼女の正義感が表れています。

筆者としては、推理、行動、映像、音楽、人物関係のすべてが同じ瞬間に頂点へ達した場面だと評価します。猫猫の知識が「謎を解く力」から「目の前の命を救う力」へ変わったことが、第19話最大の意味です。

第1位:羅漢と鳳仙の再会、そして猫猫の舞|第24話「壬氏と猫猫」

第1位は、羅漢と鳳仙の止まっていた時間が再び動き、猫猫が城壁で舞う第24話です。

羅漢は、人の顔を正確に認識することが難しく、相手を碁石や将棋の駒のように捉えています。その彼が、顔を見分けられる特別な女性が緑青館の妓女・鳳仙でした。

二人は碁や将棋を通して互いを認め、惹かれ合います。しかし、羅漢が都を離れたことで連絡が途絶えました。その間に鳳仙は猫猫を身ごもり、病によって容姿も生活も大きく変わっていきます。

羅漢は猫猫との勝負に負け、緑青館の妓女を一人身請けすることになります。華やかに着飾った妓女たちのなかから梅梅を選ぼうとしたとき、開かれた扉の向こうから歌声が聞こえました。

その先にいたのが鳳仙です。病によってかつてとは異なる姿になっていても、羅漢には彼女の顔がはっきりと見えます。

鳳仙の手に碁石を握らせ、羅漢が対局を求める場面には、二人が共有した時間が凝縮されています。長い説明や劇的な謝罪ではなく、一粒の碁石によって関係を取り戻そうとするのです。

羅漢役の桐本拓哉さんの演技には、軍師として振る舞うときの鋭さがありません。声を震わせ、目の前の鳳仙だけを見つめる姿は、肩書や能力を外した一人の男性としての羅漢を伝えます。

猫猫は羅漢を父親として受け入れておらず、普段は強い拒絶を示します。それでも青い薔薇を使った勝負を仕掛け、結果的に羅漢が緑青館へ向かう流れを作りました。

猫猫が意図的に二人を再会させたと作中で断言されているわけではありません。ただ、羅漢の性格と緑青館の状況を知る猫猫の行動が、止まっていた関係を動かしたことは確かです。

その後、猫猫は壬氏の家で、羅漢が人の顔を認識しにくいことや、彼が自分に執着する理由を語ります。公式サイトの第24話あらすじでも、猫猫が父親に対する複雑な感情を壬氏へ明かすことが示されています。

数日後の夜、猫猫は城壁の上で舞います。ここを「鳳仙がかつて踊った曲を娘が再現した」と断定できる明示的な説明はないため、そのようには言い切れません。

しかし、花街を思わせる華やかな衣装、猫猫のしなやかな動き、鳳仙の物語の直後という配置から、母と娘の人生を視覚的に重ねた演出とは解釈できます。

猫猫が舞う姿を壬氏が見守る構図も重要です。筆者には、言葉だけでは説明できない猫猫の過去と感情を、壬氏が少しだけ共有した場面に見えました。

羅漢と鳳仙が過去を選び直し、猫猫が自分の複雑な出生を抱えたまま舞い、壬氏が現在の彼女を見つめる。過去、現在、これからの関係が一つの夜に重なります。

完全に失われた時間は戻りません。鳳仙の病も、猫猫が抱えてきた感情も、一度の再会ですべて解決するわけではありません。

それでも、残された時間を誰と過ごすかは選び直せます。筆者は、この不完全だからこそ誠実な救いに、第1期全24話を締めくくる名シーンとして最も大きな余韻を感じました。


なぜ薬屋のひとりごとの名シーンは見返したくなる?

最大の理由は、初見では見えなかった意味が、結末を知った後に浮かび上がるからです。

アニメ公式サイトの制作インタビューで長沼範裕監督は、第1クールでは猫猫の目線にカメラを置き、第2クールでは少し引いて群像劇として見せたと説明しています。また、構図、色彩、音響などに先の展開を踏まえた要素を盛り込んだことにも触れています。

つまり本作の伏線は、台詞や事件の情報だけではありません。人物をどの位置から映すか、誰の顔を画面に入れるか、どこで音楽を止めるかといったアニメーションの表現にも置かれています。

第5話のそばかすは、初見では猫猫の意外な素顔を見せる仕掛けです。しかし背景を知った後は、花街で生きる少女が身につけた自己防衛の象徴に変わります。

第11話の抱擁も、最初は壬氏が猫猫へ甘えている場面に見えるかもしれません。阿多妃との関係や壬氏の立場を考えながら見返すと、彼が言葉にできない喪失を抱えていたことが伝わってきます。

第19話では、塩、海藻、キセル、盗まれた祭具、金属加工という異なる情報が一つの危機へ収束しました。一話ごとの謎を覚えていた視聴者ほど、「あの事件も準備の一部だったのか」という強い驚きを味わえます。

もう一つの特徴は、登場人物が本音を説明しすぎないことです。

猫猫は壬氏への感情を恋愛の言葉で整理しません。壬氏も自分の立場や秘密を抱えているため、猫猫にすべてを話すことができません。

その代わり、串焼きを差し出す、弱っている相手を拒みきれない、殴られても祭事場へ進むといった行動が、本音の代わりになります。

筆者は、『薬屋のひとりごと』における小道具も、人物の代わりに語る存在だと考えています。

そばかすの化粧は猫猫の警戒心、簪は後宮の外へつながる縁、碁石は羅漢と鳳仙の記憶、青い薔薇は猫猫と羅漢の知恵比べを象徴します。

人物が素直に話さないからこそ、物が感情を運ぶのです。小道具が誰から誰へ渡ったかに注目すると、会話だけを追うよりも人間関係が分かりやすくなります。

※画像はAIによるイメージ

名シーンから考察する猫猫と壬氏の関係

筆者が二人の関係で特に興味深いと感じるのは、猫猫と壬氏が正反対に見えて、実はよく似ていることです。

猫猫はそばかすを描き、目立たない下女として振る舞います。壬氏もまた、後宮を管理する美しい宦官という表向きの役割を演じ、自分の素性や責任を隠しています。

猫猫は合理性を鎧にし、壬氏は美貌と笑顔を仮面にしているのです。

その二人が近づく場面では、必ずといってよいほど仮面が少し外れます。猫猫は薬や酒を前にすると無邪気になり、壬氏は猫猫の前で嫉妬したり、拗ねたり、涙を見せたりします。

第19話は、二人の関係を大きく変えた場面です。それまでは、壬氏が猫猫へ調査を頼み、猫猫が知識で応える関係が中心でした。

祭事場では、猫猫の推理と判断が壬氏の命を直接救います。壬氏にとって猫猫は、興味深い部下であるだけでなく、自分が命を預ける結果となった存在へ変わりました。

一方の猫猫も、そこにいるのが壬氏だと知らなかったとはいえ、人が死ぬ可能性を見過ごせず、自ら危険へ飛び込みました。これは恋愛感情の証明と断定すべき行動ではありませんが、彼女の冷静さの奥にある優しさを示しています。

今後の二人には、気持ちの問題以上に身分と役割の壁があります。壬氏の立場が明らかになるほど、花街育ちの薬師である猫猫との関係は、個人の好意だけでは決められなくなります。

そのため見どころは、単に「いつ恋人になるのか」ではないでしょう。

筆者は、猫猫が自分の感情を、薬の成分や病気の原因のようには分析しきれないものとして受け入れられるかが重要だと考えます。

猫猫は他人の恋なら冷静に観察できます。芙蓉妃の行動を読み、李白が白鈴にふさわしいかを調べ、羅漢と鳳仙の関係にも間接的に働きかけました。

それでも自分が壬氏に抱く感情については、簡単な答えを出せません。この知識の届かない領域が残されているからこそ、二人の物語には続きが必要なのです。


まとめ

『薬屋のひとりごと』アニメ第1期の名シーン第1位は、第24話「壬氏と猫猫」で描かれた羅漢と鳳仙の再会、そして猫猫の舞です。

第2位は、過去の事件がつながり猫猫が壬氏を救った第19話「偶然か必然か」。第3位は、壬氏が猫猫を身請けして外廷へ迎えた第12話「宦官と妓女」としました。

第19話は、ミステリーの伏線回収、映像、挿入歌、声優の演技が一体となった「神回」を探している人に最もおすすめしやすいエピソードです。

一方、第24話は羅漢と鳳仙の恋、猫猫の出生、壬氏との現在が重なり、第1期全体を包み込む余韻があります。

本作の名シーンに共通するのは、登場人物が本音をすべて語らないことです。表情、間、小道具、構図に感情が残されるため、結末を知って見返すたびに新しい意味を発見できます。


よくある質問

薬屋のひとりごと第1期で最も有名な名シーンは何話?

神回として特に挙げられやすいのは、第19話「偶然か必然か」です。

塩分過多による高官の死、倉庫の小火、海藻による中毒、盗まれた祭具、彫金細工師の技術がつながり、猫猫が祭事場で壬氏を救います。伏線回収と救出劇を同時に味わえる回です。

猫猫のそばかすが化粧だと分かるのは何話?

アニメ第5話「暗躍」です。

猫猫は花街周辺で男性から狙われる危険を減らすため、自分でそばかすを描いて容姿を目立たなくしていました。単なる変身場面ではなく、猫猫の生存戦略が分かる重要な回です。

猫猫と壬氏の関係が進む名シーンは何話?

第11話の抱擁、第12話の身請け、第17話の街歩き、第19話の救出が特に重要です。

二人は好意を言葉で確認し合う関係ではありません。表情、嫉妬、相手を守る行動に注目すると、少しずつ距離が変化していることが分かります。

執筆:高橋 凛(アニメ・漫画考察ライター)

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