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薬屋のひとりごとの漫画はなぜ二種類?出版社別の違いを解説

中華風の後宮を背景に、同じ主人公を描いた二冊の漫画が並んで置かれているイメージ 薬屋のひとりごと

『薬屋のひとりごと』の漫画が二種類あるのは、スクウェア・エニックスと小学館という別々の出版社が、同じ原作小説を2017年からそれぞれコミカライズしているからです。

どちらも公式の作品で、片方がスピンオフというわけではなく、優劣もありません。違うのは「恋愛を厚く描くか、謎解きを速く見せるか」という方向性です。

この記事では、なぜ二種類あるのか、スクエニ版と小学館版の違い、2026年10月時点での最新巻数、どちらが自分に向いているのかまでを、確認できた情報をもとに整理していきます。

薬屋のひとりごとの漫画はなぜ二種類あるのか?

結論から言うと、「月刊ビッグガンガン」(スクウェア・エニックス)と「月刊サンデーGX」(小学館)という、別々の出版社の雑誌で、ほぼ同じ時期にコミカライズが始まったためです。

作画チームも別々で、それぞれ独立した漫画として連載が続いています。

実は、二種類ある明確な理由は公式から発表されていません。原作者の日向夏氏自身も、過去にX(旧Twitter)上で「私にもわからないから困惑していたのです」という趣旨のコメントを残しているほどです。

作者すら困惑しているというのは、なかなか珍しい状況ですよね。

ただ、結果として見れば、読者層の違う雑誌に載せたことには大きな意味があったと考えられます。

萌え系やファンタジーに強いビッグガンガンと、人間ドラマやハードボイルドに強いサンデーGX。異なるカラーの雑誌に掲載されたことで、作品の知名度は大きく広がりました。

そして各誌の色に合わせることで、本作が持つ「恋愛要素」と「ミステリー要素」が、それぞれ別の形で際立つことにもなったのです。


まず前提|『薬屋のひとりごと』の原作は小説

混乱しやすいので、まず前提を整理します。

『薬屋のひとりごと』の原作は、日向夏氏による小説です。小説投稿サイト「小説家になろう」で2011年から連載が始まり、その後ヒーロー文庫(イマジカインフォス)から書籍化されました。

キャラクター原案は、しのとうこ氏。この原案が二つの漫画で共通しているため、キャラクターの設定そのものは同じです。

※画像はAIによるイメージ

舞台は、架空の中華風の大国の後宮。花街で薬師をしていた少女・猫猫(マオマオ)が、人さらいに遭って下働きとして後宮に売られるところから物語は始まります。

目立たず年季明けを待つつもりだったのに、毒や薬が絡む事件に出くわすたび、生来の好奇心が抑えきれない。その振る舞いが、美貌の宦官・壬氏(ジンシ)の目に留まります。

ミステリー・後宮もの・薬学ネタ。この三つが同時に走るのが本作の骨格で、二種類のコミカライズは、この要素のどこに重心を置くかが違っているわけです。

つまり二つの漫画は「どちらが本物か」ではなく、同じ原作を別の角度から描いた兄弟のような関係だと捉えると分かりやすいでしょう。


スクエニ版(ビッグガンガン版)の特徴とは?

一言でいうと、「華やかな作画で恋愛・人間ドラマをじっくり味わう版」です。

スクウェア・エニックスの「月刊ビッグガンガン」に連載されているのが、通称スクエニ版です。

作画はねこクラゲ氏、構成は七緒一綺氏が担当。タイトルは副題なしの『薬屋のひとりごと』です。

最大の特徴は、美麗かつ可愛らしいイラストにあります。猫猫をはじめ各キャラクターが華やかに描かれ、装束や後宮の意匠の描き込みも濃厚です。

広告でよく見かけるのもこちらで、「薬屋のコミカライズといえばこれ」というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。

内容面では、恋愛模様や人間関係を繊細に描くヒューマンドラマ感が強いのが持ち味です。ミステリーよりもラブコメ要素が目立つよう構成されています。

各媒体の比較記事によると、スクエニ版の壬氏はより自分の容姿に自信のある振る舞いをしており、ややナルシスト気味。猫猫も壬氏への苦手意識を露骨に顔に出すなど、コミカルで可愛らしい印象が強いといいます。

一方で、ミステリー要素が一部カットされることもあるようです。たとえば原作1巻の「木簡を色付きの炎で燃やす」エピソードは、アニメ第5話では描かれたものの、スクエニ版では割愛されていると報じられています。

とはいえ、これによる大きな物語への影響はないとのことなので、過度に心配する必要はないでしょう。

個人的には、原作小説の細かな心理や状況描写を、コマ数をかけて丁寧に置いていくのがスクエニ版の強みだと感じます。1冊あたりの読み応えを重視する人に合うはずです。


小学館版(サンデーGX版)の特徴とは?

一言でいうと、「クールな絵柄で謎解きをテンポよく追う版」です。

小学館の「月刊サンデーGX」に連載されているのが、通称小学館版です。

作画は倉田三ノ路氏。タイトルには『薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜』という副題が付いています。

書店やストアで見分けるときは、この副題があれば小学館版、なければスクエニ版、と覚えておくと確実です。

※画像はAIによるイメージ

絵柄はスクエニ版に比べてシンプルで、線が軽く、コマ運びが速いのが特徴です。少女漫画調の画風が苦手な人には、こちらのクールな絵柄のほうがしっくりくるでしょう。

内容は恋愛要素よりもミステリー要素を重視。事件の提示から猫猫の観察、推理、解決までの流れが整理されており、「後宮を舞台にした連作短編ミステリー」として読みやすく仕上がっています。

猫猫の容姿も、「整っているが特徴のない顔」という原作者の説明を忠実に再現。壬氏に対しても、しっかり冷たい態度を取るクールな描写が多いといわれます。

さらに、事件や事象の説明が丁寧で、原作小説で分かりにくかった部分を補ってくれる点も魅力です。

たとえば芙蓉妃のエピソードでは、彼女が下賜されるために必要な幼馴染の武官の武功について、小学館版のほうが詳しく描かれていると報じられています。

謎解きのテンポと分かりやすさを求める人には、小学館版が心地よいはずです。


スクエニ版と小学館版の違いを比較

ここまでの違いを、読者目線で整理します。

比較項目スクエニ版小学館版
掲載誌月刊ビッグガンガン月刊サンデーGX
出版社スクウェア・エニックス小学館
作画ねこクラゲ(構成:七緒一綺)倉田三ノ路
副題なし〜猫猫の後宮謎解き手帳〜
絵柄華やか・少女漫画寄りシンプル・クール
重心恋愛・人間ドラマミステリー・謎解き
連載開始2017年5月2017年8月

絵柄の方向性は「華」か「間」かと言い換えられます。見開きの眼福を取るならスクエニ版、テンポよく読み進める快感を取るなら小学館版です。

物語の重心も明確に分かれます。後宮ドラマとしての厚みを味わいたいならスクエニ版、連作ミステリーとして謎解きを楽しみたいなら小学館版、という住み分けです。

どちらも原作を忠実に追っているため、物語の大筋は同じ。結末も共通しています。特別なこだわりがなければ、どちらを読んでも物語を楽しむのに支障はありません。


巻数と進行度の違いは?どっちが先に進んでいる?

二種類は進行ペースも違います。

連載開始はスクエニ版が2017年5月、小学館版が同年8月と、スクエニ版のほうがわずかに先でした。

ところが物語の進み方は、ミステリー重視でテンポの速い小学館版のほうが一歩先を進んでいます。

既刊数にもはっきり差が出ています。各ストアや発売情報によると、2026年10月10日時点での最新刊はおおよそ次の通りです。

  • スクエニ版(ビッグガンガン):第17巻(2026年7月24日発売)が最新
  • 小学館版(サンデーGX、〜猫猫の後宮謎解き手帳〜):第22巻(2026年6月18日発売)が最新

巻数だけを見れば、小学館版がスクエニ版を5冊ほど上回っている計算です。

ただし1冊あたりの密度が違うため、巻数の差ほど「物語の内容がどこまで進んだか」に差はない、という点には注意が必要です。スクエニ版は1巻にじっくり尺を使うぶん、冊数は少なめでも描写の濃さで読ませるタイプだといえます。

いち早く原作の先の展開を漫画で追いたいなら、進行の速い小学館版を選ぶのも一つの手でしょう。

なお、既刊数や最新刊の内容は刊行のたびに変動します。上記はあくまで2026年10月時点の目安であり、最新の巻数は購入前にストアの表示で確認するのが確実です。


どちらが人気?売上部数で比べると

部数で見ると、スクエニ版のほうがやや優勢だといわれています。

複数の媒体の情報を総合すると、スクエニ版が小学館版を部数で上回っているという点はおおむね一致しています。

その背景として大きいのが、スクエニ版が「次にくるマンガ大賞2019」でコミックス部門第1位に輝いたことです。この受賞をきっかけに発行部数が大きく伸びたと報じられています。

広告で目に触れる機会が多いことも、知名度の差につながっているのでしょう。

ただし、小学館版も根強い支持を集めており、両者の差はイメージほど極端ではありません。

シリーズ全体の勢いも押さえておきましょう。発行元のイマジカインフォスは2026年8月、小説・漫画2作品を合わせた全世界シリーズ累計発行部数が5700万部を突破したと発表しています。これは電子版や海外16言語の翻訳版も合算した数字です。

推移を見ると、2025年11月に4500万部突破が発表され、そこからアニメ第3期や劇場版の公開を前に、さらに大きく伸びた形です。もはや社会現象級の数字だと言ってよいでしょう。

ひとつ補足すると、4500万部までの数字と5700万部とでは集計範囲(海外翻訳版をどこまで含むか)が異なる可能性があります。単純な前後比較というより、「シリーズ全体が一段と拡大した」と受け止めるのが実態に近いはずです。


アニメはどちらの漫画に近い?

よくある疑問が「アニメはどちらの漫画が原作なのか」という点です。

答えは、どちらの漫画でもなく、原作は小説版です。アニメのキャラクターデザインも、漫画版ではなく小説版のイラストをベースにしています。クレジットには「キャラクター原案」としてしのとうこ氏、「キャラクターデザイン」として中谷友紀子氏が名を連ねています。

そのうえで印象として語られるのは、セリフや状況描写が原作小説に忠実なぶん、華やかさの点でスクエニ版に近いと感じる人が多い、ということです。

ただしアニメには独自の演出も加わっています。芙蓉妃の回では、芙蓉という花の解説や幼馴染との関係性を示す描写が追加されるなど、視聴者に分かりやすい補足がなされていました。

2026年にはTVアニメ第3期や劇場版の公開も控えており、アニメから入って漫画を手に取る人はさらに増えそうです。

アニメで好きになった場面を思い出すと、自分に合う漫画が見えてきます。絵の華やかさに惹かれたならスクエニ版、「猫猫が謎を解く瞬間」が好きだったなら小学館版、という選び方が外しにくいでしょう。


考察|二種類あることは「面倒」ではなく「贅沢」

ここからは筆者としての私見です。

一つの原作が複数社でコミカライズされること自体は、前例がないわけではありません。ただ、その多くは出版社やレーベルをまたいでも、片方が早期に完結・休載したり、短編・外伝的な扱いにとどまったりするケースが目立ちます。

その点で本作のように、別々の出版社の青年誌で、どちらも打ち切られずに長期連載として続き、2026年時点でそろって20巻前後まで巻を重ねているというのは、かなり珍しいケースだと筆者は考えています。

そして私は、この状況を読者にとって面倒ごとではなく、むしろ贅沢なことだと捉えています。

同じ事件を、別の作家が別の呼吸で描いている。片方で読んだ話をもう片方で読み返すと、猫猫という人物の見え方が少しずれる。その差分こそが、本作ならではの楽しみだと思うのです。

実際に両版で同じ場面を読み比べると、違いは絵柄だけではないと分かります。

たとえば謎解きのシーンで、小学館版は手がかりと推理をコマ単位で順序立てて見せ、読者が猫猫と一緒に答えへたどり着けるよう「間」で設計されている印象があります。

一方のスクエニ版は、同じ場面でも猫猫の表情や周囲の反応にコマを割き、事件そのものより「その場にいる人々の感情」を立たせてくる。読後に残る余韻が、両版でまるで違うのです。

そもそも本作がこれほど支持される理由は、猫猫が後宮という場所にまったく夢を見ていないことにあると筆者は考えます。

玉の輿にも権力争いにも興味がなく、あるのは薬と毒への偏執的な好奇心だけ。その縛られない視点が、閉鎖的で華やかな後宮を自由に歩き回るからこそ、独特の風通しが生まれます。

そして謎の答えが、たいてい人間の事情に着地する点も見逃せません。毒の正体が分かって終わりではなく、なぜその人がそれを使わざるを得なかったのかまで描かれる。ミステリーの快感と後宮ものの切なさが、同じ場所で回収される構造になっているのです。

この魅力は、どちらの版でも損なわれていません。だからこそ、「どっちが正解か」ではなく「どっちのリズムが自分に合うか」で選べばよい、と個人的には考えています。

もし1冊読んで「思っていたのと違う」と感じたら、作品が合わないのではなく、選んだ版のテンポが合わなかっただけという可能性が高い。もう片方を試してから結論を出しても遅くはないでしょう。

今後についても、アニメ第3期や劇場版の公開でシリーズ全体の需要が高まっている以上、出版社としても両版を並行して刊行し続ける動機は強いと見るのが自然です。読者としては、嬉しい選択肢がこれからも続くということになります。


まとめ|自分に合う一冊を選ぼう

『薬屋のひとりごと』の漫画が二種類あるのは、スクウェア・エニックスと小学館が別々に同じ原作をコミカライズしているためです。理由は公式に明言されておらず、作者の日向夏氏も困惑していると語っています。

スクエニ版(ビッグガンガン)は華やかな作画と恋愛・人間ドラマが持ち味。小学館版(サンデーGX、副題「〜猫猫の後宮謎解き手帳〜」)はクールな絵柄とミステリー重視のテンポが魅力です。

2026年10月時点の最新刊はスクエニ版が17巻、小学館版が22巻で、進行は小学館版が先行。部数ではスクエニ版がやや優勢ですが、どちらにも確かな支持があり、物語の大筋は共通しています。アニメは小説版が原作で、印象としてはスクエニ版寄りです。

どちらが正解かではなく、自分がどちらのリズムに惹かれるかで選ぶ。迷ったら両方の1巻を読み比べてみる。それが、この作品を最も深く楽しむ道だと言えるでしょう。


よくある質問

薬屋のひとりごとの漫画はなぜ二種類あるのですか?

スクウェア・エニックスと小学館という別々の出版社が、同じ原作小説を2017年からそれぞれコミカライズしているためです。明確な理由は公式から発表されておらず、原作者の日向夏氏も「わからない」と語っています。

スクエニ版と小学館版、どっちが先に進んでいますか?

巻数では小学館版が先行しています。2026年10月時点の最新刊は、スクエニ版が17巻、小学館版が22巻です。ミステリー重視でテンポの速い小学館版のほうが、物語の先へ進んでいます。

スクエニ版と小学館版、どっちが人気ですか?

部数ではスクエニ版がやや優勢とされています。「次にくるマンガ大賞2019」コミックス部門1位の受賞や、広告露出の多さが背景にあると考えられます。ただし小学館版も根強い人気があります。

原作小説に近いのはどちらですか?

どちらも原作に忠実ですが、恋愛や心理描写の厚みはスクエニ版、事件説明の丁寧さやミステリーの忠実さは小学館版に強みがあると評されています。好みで選ぶのがおすすめです。

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